あやせたん……好き……
ニコ動を開いた。
某失踪村村長によるGTASAの淫夢実況シリーズの新作が出ていないか知りたかったのだ。
残念ながらこの前見たのが最新のものだった。
ふと、検索欄を見た。
ひときわ異彩を放つ文字列が目に入った。
それは、
「ラブリーマイエンジェルあやせたん」
気づけば僕の指はそのタグをクリックし、ドナウ川のように自然な流れで「罵れ!あやせさんW【FULL】 - ニコニコ動画」を開いた上、更にはリピート再生を有効にしていた。
MADとしての選曲もさることながら、早見沙織によるあやせたんのマジギレボイスが耳に心地よい。これはいつまでも聴いていられる。僕の脳は最近の流行語である「〜しか勝たん」というフレーズの指し示す概念を完全に理解し、その口からは「あやせたんしか勝たん……」と漏れ出していた。
あやせたんは素直ないい子だ。親友との関係回復のためなら自分に対してセクハラを行う相手(それは親友の兄なのだが)にも助けを求めるし、親友の頼みであればそのセクハラ男の世話を焼きさえする。
素直ないい子で、手が出るのがあやせたんだ。
その性格のために我々は、どこからどう見てもおしとやかな美少女が年上の男性の頭(それは親友の兄の頭なのだが)に体が吹き飛ぶ威力のハイキックをぶちかましたり、中学生の語彙で精一杯の罵倒をしたり、照れながら包丁を振り回したりといった場面を見ることになる。
しかし我々はもう一つの、決定的な情報を知っている。
いい子で、手が出て、主人公のことを好きなのがあやせたんなのだ。
何ということか、彼女は我々のことを心臓麻痺か何かで殺す気に違いない。彼女は好きな相手を(それは親友も好きな相手なのだが)その素直さ故に蹴り飛ばしていたのだ。
ここまで眩しい感情はそう簡単に見れるものではない。だからこそ、これに惹きつけられないわけがない。恋をしないわけがない。
これが唯一通用しなかったのが真正のシスコンであり彼女の好きな人でもあったというのは、もう皮肉としか言いようがない。
せめて僕にできることは、あやせifを買って読むことと俺妹ポータブルであやせ√を真っ先に攻略することぐらいだろう。